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ナノテクノロジーで、分子サイズのコンピュータを実現せよ。 工学部電気電子工学科 堀尾研究室

「ある日の堀尾研」研究室 実況LIVE

所狭しと並ぶ奇妙な形の装置や計器・ディスプレイ。
そのうちのひとつ――
銀色の胴体からさまざまな方向に、大小の筒状のものが飛び出した機械がある。
この装置を操りながら、二人の学生が見入るのは、傍らのモニター。
そこには、赤っぽい光の中、規則正しく並んだツブツブが浮き上がっている。
じつはこのツブツブ、ひとつひとつが原子なのだ。
もちろん、従来の光学顕微鏡や電子顕微鏡では、原子を見ることなどできない。
でも、このSTM(走査型トンネル顕微鏡)は、ナノメートル(100万分の1ミリ)単位の
世界特有の物理現象を利用することで、物質表面を原子レベルでスキャンできる。
そして、この技術は逆に、まだわからないことの多いナノレベルの現象を解き明かすカギともなる。

堀尾研究室を知るための3つの"?"

取り組む課題 原子レベルの、見えない世界をどう見るのか?

ナノテクノロジーという言葉がマスコミに登場して久しいが、まだ実際には、一部の半導体などに応用されているに過ぎない。ナノスケールの世界では、われわれが日々生き、感じている世界では考えられないようなことが起きる。モノが障害物となる他のモノを通り抜けてしまったり、物質の特性がマクロスケールの世界とはまったくちがったものに変わってしまったり‥‥。そうした現象を利用すれば、従来の何万分の1の大きさの電子デバイスなどがつくれる。つまり、電子回路が何万倍にも集積できる。極言すれば、分子サイズのコンピュータさえ可能になるのだ。それはわかっているのだが、実際につくるのは容易ではない。簡単に言えば、肝心の現象そのものが観察できない、その構造が見えないことが、開発の障害となっているのだ。

研究の方向 最新機器と技術で、ナノの世界を切り拓く。

堀尾研究室には、現在、冒頭で紹介したSTMをはじめ、ナノレベルの構造を解析するための設備がそろっている。それらの機器を利用し、シリコンやチタンなどの結晶表面や薄膜の構造解析を原子レベルで進めている。未来のナノデバイス技術の代表として語られることの多い、カーボンナノチューブの試作や解析なども行う。もちろん、ナノテクそのものが発展途上の技術だから、STMなどを使った解析法も、まだまだ工夫や改良の可能性を残している。そんな新たな手法を確立するとともに、まだわかっていない薄膜や結晶面の原子構造を明らかにしようとしている。

「トンネル効果」を利用して、原子をスキャン。

STM(走査型トンネル顕微鏡)は、ナノスケールの世界だけで起こるトンネル効果という現象を利用している。微細な粒子が本来なら通れないはずの障壁を通り抜けてしまう現象。「素粒子は同時に波でもある」という量子力学の定理が、ナノスケールでは実際に起こる。粒子(モノ)は壁を透過できないが、波(振幅)ならそれを超えて伝わる。この粒子が通り抜けることを「トンネル効果」と呼ぶ。写真は、STMにより描き出されたシリコン結晶表面の原子構造。タングステンでできた細い針が、サンプル表面近くを少しずつズレながら行ったり来たり(走査)し、原子から飛び出してくるトンネル電流を読み取る。そこから増幅された電気信号が、モニター上で再構成される。

大きく広がっていくナノテクの世界。

結晶表面や薄膜の解析には、RHEED法という手法も使われる。サンプル表面すれすれに電子ビームを照射し、表面で反射する回折電子線群を蛍光スクリーン上に回折図形として投影、その幾何学や回折斑点強度の解析から原子構造を明らかにする。ナノテクノロジーそのものが、未だ発展途上の分野だからこそ、研究の余地はまだまだある。実験などでのちょっとしたアイデアや工夫が、研究を飛躍的に発展させる可能性もある。ナノテクが技術開発の次世代を開くと言われている今、それを知っていることは、大きな力となるはずだ。

近い将来、技術者必須の知識になる

教授 堀尾 吉已 工学博士

マテリアルサイエンスの応用研究ではありますが、ナノテクノロジー研究全般の基盤となる技術ですから、基礎研究に近い分野だと言えるかもしれません。それだけにナノテク全体に対しての知識が身につきます。今後、ナノテクの研究開発は、ますます進み、またさまざまな産業界へと広がっていくでしょう。 10年後、20年後には、ナノテクがわからないと、技術者として生きていけないという状況になる気がします。ここで、研究を通して学んだ知識は、技術者として社会に出たあとも、生きてくるはずです。実際、現在も産業界から希望が寄せられ、共同研究が進んでいます。

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